人類は宇宙に出るために進化してきたのではないか。ある宇宙飛行士の言葉だったと思います。一人の人間がいかに小さな存在であるか、そして地球という惑星がいかに脆いものかをその目にした人の言葉として印象に残っています。
かつて宇宙開発に傾倒した者として、スペースシャトルコロンビアの事故はショックでした。
原因については機体の老朽化や打ち上げ時の損傷などの説が出ています。
考えてみればコロンビアは就役から20年、フライト回数も28回を数えており、老朽化が進んでいても不思議はありません。普通の航空機でも20年といえばだいぶ老齢の部類に入るはずです。まして、飛行のたびに過酷な状況に晒されるシャトルですから、疲労破壊が起きたとしても不思議はありません。
或いは打ち上げ時の損傷が原因だとして、なぜその状態で降下を強行したのでしょうか。船外活動時に損傷を詳細にチェックするなどの対応も出来たはずです。
ただ、どちらだとしてももっと慎重に対応していれば防ぐことの出来た事故だという感を強く抱きます。
どうも最近のアメリカの国情を反映しているのではないか、というのは穿ちすぎた見方でしょうか。外向けの成果を急ぐあまり内省的な視点を忘れ、その挙句に悲劇的な結末を招いてしまう、というシナリオが浮かんでしまいます。同時多発テロからずっとアメリカにつきまとっている悪魔の正体は、実はアメリカの影のようなものなのかもしれません。イラクへの武力行使が取りざたされる中、初のイスラエル人飛行士を乗せていたというのもなんだか皮肉です。
冒険の時代を脱して産業へと成長しようとしている宇宙開発にとっては、またひとつ手痛い敗北になりました。冒険の時代ならいざ知らず、産業として成立するためには安全性は必須です。建設中の国際宇宙ステーションは停滞を余儀なくされるでしょうし、規模縮小の可能性もあります。
それでも人は宇宙を目指すでしょう。知らないものを知りたくなるのが人というものの特質ですから。
今はとにかく、亡くなられた7人の宇宙飛行士たちのご冥福をお祈りします。
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