なんて甘っちょろい話だろう。
この話は学生時代マンガ用に考えたアイデアを翻案したものだ。
話の骨格は3年半ほど前に既に出来ていたので、執筆には一昼夜しかかからなかった、という代物である。
当時、私は半ば引きこもりの状態にあった。
そんな私がこんな話を考えたんだから、今にして思えばなかなか笑える。
まあ、あの当時はいろいろ考えていたのだ。
「自分が一体何者なのか」というのは、当時の私にとって最重要なテーマだった。
もしもそれを証明してくれる人が誰もいなくなったら、という発想がこの話の大元にある。古典的だが「人は一人にて生くるにあらず」というわけだ。
だから、主人公は最初から妻子持ちのおじさん、と決めていた。
普段自分の存在に疑問を差し挟むことは無いだろう、というのがその理由。
一応今回は予定していたものをすべて実現できた。
ちょっと前までNHKのFMでやっていた「クロスオーバーイレブン」。この番組のスクリプト(毎日ちょっとしたエッセイやショートストーリーを津嘉山正種が渋い声で朗読していた)の雰囲気を狙ってみた。学生時代毎日のように聴いていた番組だが、最近番組改変で消えてしまい、ちょっと寂しい。
そんなこんなで、ショート・ファンタジーの1作目はこんな恥ずかしい話。
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