WRC(World Rally Championship=世界ラリー選手権)はよく「公道最速のパフォーマンス」と言われます。
閉鎖された公道(Special Stage、以下SS)を舞台に市販車をベースに改造した競技車両で行われる競技がラリーですが、WRCはその最高峰。年間14のイベントが世界各地で行われ、それぞれのイベントごとに勝敗を競うほか、入賞者にはその順位に応じたポイントが与えられ、年間の合計ポイント数が最も多い者がドライバーズチャンピオン、またそのドライバーの獲得ポイントをチームで合計し、それが最も多いチームにマニュファクチャラーズチャンピオンの称号が与えられます。
ま、能書きはさておきその魅力ですが、なんと言ってもまずそのパフォーマンスにあります。
ラリーはF1のようにサーキットで行われるわけでなく、普通の公道を閉鎖して競技が行われるので、競技環境は非常に多彩です。舗装路面(ターマック)、非舗装路面(グラベル)のほか、スウェディッシュなどのイベントでは雪が積もっていたり凍結している路面でも競技が行われます。ドライバーは助手席に乗ったコ・ドライバーが読み上げるペースノートというコースの指示書を頼りに、自分のテクニック、経験、勘などを総動員してめまぐるしく変わる路面状況に対応して車を走らせます。車内映像を見るといかに忙しいかがよくわかります。
競技車両は先ほど述べましたように市販車両をベースにしたものなので、見た目は街で見かける車とほとんど違いはないのですが、それが限界ぎりぎりの挙動で狭いSSを走り抜けるわけです。これが「公道最速」と言われるゆえんです。選手権を争うWRカーは、そのレギュレーションの制約を受けつつもそれでも市販車とは比べ物にならないほどの高性能ですから、まさにモンスター。それが普通の道を普通でない速度で駆け抜ける光景は、心地よい戦慄を味わわせてくれます。
観客とコースの距離が近いのも魅力でしょう。ビデオなどで見ていると「一度でいいから目の前で見てみたい」と思えます。
サーキットレースと違ってわかりにくい点もあります。
まず各選手は一定の時間差をおいてスタートするので、誰が一番早かったのかはゴール順ではわかりません。あくまで計測されたタイムが頼りです。
また、観戦するにしても同じところを周回するわけではなく複数設定されたSSを移動しながら競技が進行するため、ひとつの場所で見られるのは原則として1回だけ(同じ区間を2回以上使う場合もありますが)。苦労して場所取りをしてもSSがキャンセルされることもあるので必ず見れるわけではないということも。
ヨーロッパ生まれのスポーツは意地の悪いものが多いですが、ラリーもその典型かもしれません(笑)。
ドライバー個人の資質だけでも、クルマの性能だけでも、メカニックの腕だけでも勝てず、常にチームとしての総合力が問われ、しかもそれがすべて揃っていても運に見放されればそれまで。勝てそうでもなかなか勝てないのに、勝てるときにはひょいっと勝ってしまう、というのがラリーというスポーツの面白いところです。
ファンとして結果を追うのもなかなか大変ですが、イベントが行われるたびにTV放映(私んとこじゃやってないようです)があったり、あとでDVDが出たりしますので、もし興味をもたれた方はちょっとご覧になってはいかがでしょうか。病みつきになりますよ。
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