PEUGEOT 306 MAXI Evolution2

仕上:030817
1997, 33rd Rally CATALUNIA, F.Delecour

 前から描こうと思っていたのですが、今回ようやく果たすことが出来ました。
 ターボ過吸と四輪駆動の日本製ラリーマシンが席巻した90年代のラリーシーンにおいて、自然吸気・二輪駆動ながら圧倒的な速さを見せつけ、彗星のように消えていったキットカー、その戦闘力をまず実証してみせた伝説のマシンです。
 その頃私はラリーにはまだ興味がなく、リアルタイムでその活躍を見れなかったことが一番悔やまれるマシンでもあります。
 私がラリーに興味を持つきっかけになったのはご多分に漏れず「セガラリー2」だったりするわけですが、この306マキシはその中でも特に異彩を放っていました。
 その理由はなんと言っても外観です。ベースになったロードカーはピニンファリーナの手による優雅なデザイン。キットカーレギュレーションの利を最大限活用した306マキシは、前後輪のワイドトレッド化によって大きく膨れ上がったフェンダーというかなりインパクトのある外観ですが、ベースカーの優雅さは少しも損なわれていません。さらに白を基調に青と赤を配置したトリコロールの「愛国的」カラーリングは、それまで私の持っていた「武骨一辺倒」というラリーカーに対するイメージを劇的に変えました。私は今でも306マキシは世界一美しいラリーマシンだと信じて止みません。
 そして、その見た目の美しさと裏腹の戦闘力、官能的な高音のエキゾーストノート、FFという駆動方式に由来するアンバランスさ。これはもう、「セクシー」と形容するほうがいいかもしれません。二律背反的な魅力に満ちた、芸術的な機械と言えるでしょう。
 その後調べてみると、このマシンは何度もSSベストタイムをたたき出しながらもそのあまりのデリケートさゆえか結局WRCでは勝利できず、キットカーのWRCでの勝利はシトロエンクサラに譲ったという経緯もありました。そして、306マキシの引退とともに、最強のWRカー・206WRCが登場します。伝説の伝説たるゆえんです。
 このマシンは強烈なインパクトを私に与え、プジョーというメーカーに対する私のイメージを決定付け、最終的には私をプジョー車のオーナーにまでしてしまいました。そういう意味で言えば、私の人生を変えたマシンなのかもしれません。


注:外観は97年カタルニアのF.デルクール仕様のはずですが、何せ少ない資料をかき集めて描いたので、シートやレーシングハーネスは多分間違っていると思います。

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