「最終兵器彼女」という作品を、どのように紹介すればよいだろうか。
敢えて一言で云えば、「恋愛もの」と呼ぶほかない。
絶えて久しい、純粋な恋愛もの。
互いに恋する二人がいて、それぞれの想いにすれ違いがあって、その恋に対する障害があって、というただそれだけの物語。
ただ、「恋愛もの」にしては主人公達の置かれている状況が少しシビアなだけである。
彼女であるちせが「最終兵器」(!)にされ、戦場へと赴くこと。
彼氏であるシュウジが、そんなちせを待ちつづけていること。
必要なのはこの2点のみといってよい。
物語の背景に「戦争」があるが、それがどのような経緯で勃発したのか、また紛争当事国は日本のほかにどこなのかはまったくわからない。また、「最終兵器」とは一体なんなのか、そしてなぜちせが最終兵器にされたのかもわからない。
また、それがわからなくても一向に構わない。
そんな物語である。
この物語の楽しみは、そんな絵空事でしかない”背景”を読み解くことではなく、二人の恋の行方を読者がどきどきしながら見守ることにある。
自分の肉体が次第に人間でなくなっていくことに必死で抵抗するちせや、自分の彼女が変わっていく姿を葛藤しながら受け入れていくシュウジの姿は、この「恋愛もの」を一層感動的なものにしている。
性に関する表現も抑えていないため、そういったものが好きでない方は不快感を持たれるかもしれないが、「恋愛もの」から「性」を取り払ってしまっては、単なるキレイごとに過ぎないと私は考える。
様々な意味で「よく出来た恋愛もの」だと私は思う。
この物語は読む人によって評価が二分される。
この物語を読んであなたがどう感じるかはあなた次第だ。
ただ、私はこの物語を敢えて擁護する。
|